建設会社の設計職の忙しさの正体と、設計事務所ではなく建設会社で設計する意味
建設会社の設計職が忙しくなるのは、作業量の多さより「締め切りが施工の工程に直結している」ためです。図面が1日遅れれば、現場の段取りも1日ずれます。その一方で、描いた図面が数か月後に実物の建物になり、完成後も改修で関わり続けられるのは建設会社の設計ならではの特徴です。忙しさの中身と、自分の案が通るかどうかは、分けて考える必要があります。
製図室で課題の模型を仕上げた深夜、ふとスマホで「建設会社 設計 きつい」と検索する。出てくるのは「激務」「徹夜」「自分のデザインは通らない」という言葉ばかり。「設計事務所のほうが、好きなものを描けるんじゃないか」「建設会社の設計って、結局は施工のための図面係?」「BIMが使えないと置いていかれる?」。
設計を志す人ほど、自分の案がどう扱われるかを気にします。その不安はもっともです。この記事では、建設会社の設計職の忙しさがどこから来るのか、設計事務所との違いは何か、そして入社前に何を確かめれば判断しやすくなるのかを、当社の設計部の実情に沿って整理します。
【この記事のポイント】
- 忙しさの正体は、施工工程と連動した締め切りにある
- 建設会社の設計は、つくる人と同じ社内で図面を磨ける
- 案が通るかは会社の規模より、意見を出せる風土で決まる
この記事のまとめ:要点3つ
- 忙しさは「量」より「連動」。 設計の遅れが現場に響くため、締め切り前に負荷が集中しやすい構造があります。
- 設計事務所と建設会社は、得意な領域が違う。 意匠の自由度は設計事務所、施工との距離の近さは建設会社に強みがあります。
- 入社前に見るべきは、若手の図面がどう扱われているか。 先輩が手を止めて教えてくれるか、若手の意見が採用される場面があるかが目安です。
この記事の結論
- 一言でいうと、建設会社の設計職は「つくれる図面」を描く力が早く身につく仕事です。
- 最も重要なのは、忙しい時期とその理由を面接で具体的に聞くことです。
- 失敗しないためには、設計事務所とも比べたうえで、自分が伸ばしたい力を決めることです。
設計志望の学生が「きつい」と感じやすい理由
課題の締め切り明けに、求人票の「設計職」を閉じてしまう
設計課題の講評が終わった翌日、就活サイトで設計職の求人を開く。「残業あり」の文字を見て、そっとタブを閉じる。課題の徹夜が社会人になっても続くのかと思うと、それ以上読み進められない。
採用担当として話を聞いていると、設計志望の学生の多くが、学生時代の課題の忙しさを仕事に重ねています。正直なところ、その想像は半分当たっていて、半分は違います。
建設会社の設計が忙しくなる3つの場面
忙しさが集中しやすいのは、次のような場面です。
- 着工前の実施設計。 工事の開始日が決まっているため、図面の完成日も動かせません。
- お客様との打ち合わせ後の変更。 仕様の変更が入ると、関連する図面をまとめて修正します。
- 施工中の図面調整。 現場から「この納まりはどうするか」と問い合わせが入り、すぐに答える必要があります。
一方で、建設業全体では2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、国土交通省や業界団体も働き方の見直しを進めています。日本建設業連合会が4週8閉所の取り組みを掲げているのもその一つです。忙しい時期がなくなるわけではありませんが、昔の「当たり前」とは前提が変わってきています。
入社1年目の設計社員が驚いた、デビュー戦の図面の量
専門学校を卒業して設計部に入った若手社員は、学校に来ていた求人から軽い気持ちで選考を受け、インターンと社長面接を経て入社しました。最初に担当したのは、A2サイズで約360枚の図面。学生時代の課題は多くても数十枚だったので、その量には驚いたそうです。
ただ、1人で抱えたわけではありません。先輩が工程を区切り、「今週はこの範囲」と目標を決めてくれました。彼は「学生時代に学んだことが、そのまま役立つことはほとんどなかった(笑)」と振り返っています。それでも、360枚を描き終えたころには、図面1枚ごとに現場の誰が何のために見るのかを考えられるようになっていました。
設計事務所ではなく、建設会社で設計する意味
設計事務所と建設会社、それぞれの強み
どちらが上ということはありません。伸びる力の方向が違います。
| 比べる項目 | 設計事務所 | 建設会社の設計部 |
|---|---|---|
| 意匠の自由度 | コンペや作品性の高い案件に関わりやすい | 予算・工期・施工性とのバランスが重視される |
| 施工との距離 | 監理の立場で現場と関わる | 同じ社内に施工管理がいて、すぐに相談できる |
| 担当する建物 | 事務所の得意分野に左右される | 工場・倉庫・福祉施設など非住宅が多い傾向 |
| 完成後の関わり | 引き渡しで一区切りが多い | 改修や診断で長く関わることがある |
設計事務所には、自分の作品として建物を残せる魅力があります。アトリエ系の事務所で意匠を磨きたい人にとっては、そちらが合う場合もあります。ケースによりますが、将来の独立を考えるなら、設計事務所で経験を積む道も有力な選択肢です。
現場の声:BIMのパースを前に、先輩と新人が話したこと
環境デザイン系の学科を出て設計部に入った若手と、先輩設計者のやりとりです。福祉施設の改修で、BIMを使ったパースを作っていた日のことでした。
「このパース、お客様に見せる前に直したほうがいいところはありますか」
「窓の位置、もう少し右にずらせないか施工管理に聞いてみて。構造的には問題ないと思うけど、足場の都合があるかもしれない」
「設計の段階で、足場のことまで考えるんですか」
「うちは同じ会社で施工するからね。つくる人の都合を先に聞いておくと、後の変更が減る」
「……自分の案、通りますか」
「いい案なら通るよ。立場は関係ない。むしろ若手の案のほうが、お客様に刺さることもある」
この若手は、入社前は「建設会社の設計は、上の人の指示どおりに描くだけでは」と半信半疑だったそうです。実際には、先輩が手を止めて教えてくれる場面が多く、自分の意見を出す機会もありました。入社してから変わったのは、週末の過ごし方。休みの日に街の建物を見て回るのが、再び楽しみになったと話していました。
改修と「建設ドクター」の視点で設計する面白さ
実は、建設会社の設計の面白さが一番出やすいのは、改修の仕事です。当社は「建設ドクター」として、携わった建物を診断し、治療し、支え続けることを掲げています。既存の躯体を補強・再利用する再生建築では、コストを約3割、廃棄物を約7割減らせます。
新築のように白紙から描くのとは違い、既存の建物の制約の中で最適な答えを探す仕事です。設計部の若手の中には、工場・倉庫の改修・建替を担当する中で、非住宅の設計の奥深さに気づいた人もいます。約14億円規模の案件を担当した設計者もいて、規模の大きな仕事に関わる機会もあります。
設計職への不安が強かった人が納得できた判断基準
他社比較にも使える判断基準4つ
設計事務所・ハウスメーカー・他の建設会社との比較にも使える基準です。
- 忙しい時期とその理由を説明できるか。 「いつ・なぜ忙しいか」が具体的に返ってくる会社は、負荷の見通しを立てやすくなります。
- 若手の図面を誰がチェックするか。 先輩が添削する仕組みがあるか、1人で抱えさせないか。
- 担当する建物の種類。 住宅か非住宅か、新築か改修か。自分の興味と合っているか。
- 資格取得の支援。 一級建築士の受験支援や手当の有無。当社では一級建築士が18名在籍し、合格祝い金や資格手当もあります。
設計職の初任給は、当社の場合で大卒265,400円、院卒285,400円、短大・専門・高専卒245,400円です。金額や制度は変わることがあるので、最新の募集要項と面接で確認してください。
よくある失敗:作品集の評価だけで会社を選ぶ
よくあるのが、ポートフォリオを高く評価してくれた会社に、仕事内容を確かめないまま決めてしまうケースです。評価されるのはうれしいことですが、入社後に担当する建物の種類や、1年目の仕事内容を聞いておかないと、「思っていた設計と違う」と感じやすくなります。
もう一つは、「きつい」という口コミだけで建設会社の設計を候補から外すこと。施工と近い場所で設計を学べる機会を、自分から手放してしまうことになります。
信頼できると感じるまで:ある建築系学生の時系列
岐阜県内の大学で建築を学んでいた学生の例です。
- 応募前の不安: 建設会社の設計は激務で、自分の案は通らないと思い込んでいた。
- 比較中に迷った点: 名古屋のアトリエ系設計事務所と、ハウスメーカー、当社の3社で迷っていた。意匠の自由度では設計事務所に魅力を感じていた。
- 最終的に安心した理由: インターンで、若手の描いた図面に先輩が赤を入れながら理由を説明している場面を見た。選考中、親の心配にも採用担当が丁寧に答えてくれた。
- 決める前に確認したこと: 1年目に担当する図面の種類、BIMを使う場面、繁忙期の時期。
最後に彼女が決め手にしたのは、「描いた図面が建物になるまでを、同じ会社の中で見届けられること」でした。
迷っているなら、まず設計部の空気を確かめるところから
建設会社の設計職が自分に合うかどうかは、実際に図面が描かれている場を見るのが一番です。当社では、オーダーメイドインターンシップや、思考・行動のクセを可視化する「EG」セミナー、社長が登壇する会社説明会「TOPLIVE」などを行っています。開催日は変わることがあるので、最新の情報はインターンシップ・説明会ページで確認してください。
設計事務所やハウスメーカーと比べてからで構いません。比べたうえで、建設会社の設計という選択肢を一度見ておいてもらえれば十分です。
よくある質問
Q1. 建設会社の設計職は、設計事務所より忙しいですか?
A1. 一概には言えません。建設会社は施工工程と締め切りが連動するため、着工前に負荷が集中しやすい傾向があります。
Q2. 自分のデザイン案は採用されますか?
A2. 予算・工期・施工性の範囲で、良い案なら若手でも採用されます。当社では立場に関係なく意見を尊重する風土を大切にしています。
Q3. BIMは入社前に使えないといけませんか?
A3. 入社前に使える必要はありません。入社後の研修と配属先での指導で身につけていく人がほとんどです。
Q4. 内藤建設の設計はどんな建物を担当しますか?
A4. 工場・倉庫・福祉施設など非住宅の新築や改修・建替が中心です。約14億円規模の案件に関わった設計者もいます。
Q5. 専門学校卒でも設計職に就けますか?
A5. 就けます。専門学校卒の設計部社員も活躍しています。初任給は2027年度で短大・専門・高専卒245,400円です。
Q6. 一級建築士の取得は支援してもらえますか?
A6. 支援があります。資格手当は最大月9万円で、一級建築士は別途合格祝い金の対象です。社内には一級建築士が18名います。
Q7. 設計職でも現場に行きますか?
A7. 行く機会はあります。施工管理と同じ会社なので、納まりの確認などで現場に足を運ぶことで、図面の精度が上がります。
まとめ
- 建設会社の設計の忙しさは、施工工程との連動から生まれる
- 設計事務所は意匠の自由度、建設会社は施工との距離の近さに強みがある
- 案が通るかは、若手の意見を尊重する風土があるかで決まる
- 忙しい時期とその理由、担当する建物の種類を面接で確かめる
設計の仕事に迷いがあるのは、真剣に設計と向き合っているからこそです。
描いた線が建物になり、その建物と長く付き合っていく働き方を、一度のぞいてみてください。内藤建設のインターンシップや説明会では、設計部の若手に直接質問できる時間も用意しています。
内藤建設の採用情報
岐阜市に本社を置く創業1947年の総合建設会社です。施工管理(建築・土木)・設計・営業を募集しています。まずは説明会やインターンシップで、現場の空気を確かめてみてください。